食と料理の未来を考える。Smart Kitchen Summit 2019潜入レポート

以前、展示会参加を勧める記事を書いたが、先日私たちもシアトルで開催されたSmart Kitchen Summit 2019に参加してきた。そこで、今回はその中で垣間見えた食と料理の未来について簡単に紹介しようと思う。


Smart Kitchen Summit とは?

Smart Kitchen Summit(SKS)とは、フードテックに関するメディアを運営しているThe Spoonが主催するカンファレンスだ。毎年10月にシアトルで開催され(東京やヨーロッパでも別時期に開催)、大企業からスタートアップまで、食や料理に関わる多くのプロフェッショナルが参加しているイベントだ。メインのイベントは、登壇者による講演だが、企業による製品展示も行われている。

シアトルの海沿いの心地よい会場だった

SKS 2019 超簡単サマリー

今回は二日目の午後だけしか回る時間がなく、大きなイベントのほんの一部の情報となってしまうが、その中でも編集部が感じた最先端トレンドを簡単に紹介しよう。


サステナビリティ志向への多様な提案

我々のファッションの記事でもよく出てくるテーマであるが、サステナビリティへの意識の高さは食と料理の領域にも見られる。その中でも今回SKSに参加して感じたのは、サステナビリティ志向への多様な解決策だ。

SKS2019のスタートアップショーケースでも優勝したStix Freshは、現状、60%のフルーツが使われる前に腐ってしまっているという課題に対して、フルーツに貼り付けるだけで腐るまでの期間を14日間も引き延ばすことが可能なシールを作っている。

Stix Fresh
Source: Stix Fresh HP

最近人気のミールキットの領域でも、家庭におけるフードロスの解決を目指すスタートアップが出てきている。ends + stemsはそんなスタートアップの一つだ。

ends + stems

また、Memphis MeatsImpossible Foodsに代表される代替肉スタートアップは、屠殺を減らすという目的以外にも、家畜の飼育から生じるCO2排出水の大量消費問題の解決も狙っている。この動きは、世界中で漁獲高が近年急激に減少していることを背景に、人工の魚肉や魚の養殖を目指すスタートアップにまで広がっているようだ。

話は脱線するが、代替肉はラボで作られるため、バクテリアの繁殖が少ないというのは今回の新しい発見だった。

Memphis meats
Memphis Meatsの代替肉は、ラボで細胞を培養して作るのでバクテリアがほとんどつかない

スタートアップによる自社製ハードウェアの提供

また、我々が驚いたのが、多くのスタートアップが自社で開発したハードウェアを提供していたことだ。一般的に、莫大な研究開発費等リスクの高さからハードウェアスタートアップはこれまで少なかったが、ここにきて増えている印象だった。我々が推測するに、最近のフードテックスタートアップへの投資額の増加や、3Dプリンター等ハードウェア開発にかかるハードルが下がっているのが効いているのだろう。また、食に関する課題解決において、ハードウェア抜きでは語れないというのも要因だろう。

Source: The Wall Street Journal, Dow Jones VentureSource | VentureWire

実際に会場で展示していたスタートアップを少し紹介すると、、

Yokai Expressというスタートアップはサンフランシスコでラーメン等ヌードルの自動販売機を提供している。創業メンバーは台湾出身のハードウェアエンジニアで、ハードウェア、ソフトウェア、食品全てを自社で作っているというから驚きだ。現在のラインナップはラーメン、フォー、うどん等だが、今後は牛丼、親子丼、カツ丼等の丼ものも提供していくらしい。

会場で実際に試してみたが、たったの45秒で出来上がり、味も美味しかった。価格は11ドル程度。アメリカでラーメンやうどんを食べようと思うと、チップも含めて20ドルは余裕で超えてしまうことも多いので、悪くない価格帯ではないだろうか。

今回試せたのは天ぷらうどん。麺もスープも美味しかった

HotSpot CookTopというスタートアップは、フラットトップ型のグリル機器を展示していた。一枚の大きなフラットトップだが、食材に合わせてそれぞれ加熱温度を変えられるという。

会場で調理デモを行っていた

正直デザインはMVP(Minimal Viable Product)の状態だったが、それでも臆さず会場で展示し、投資家や将来のユーザーから反応を見る姿勢は、我々も見習うべきところだと思った。

デザインスクール でもしつこく教えられることだが、とにかく作ってナンボなのである

Juneというスタートアップは、AIが搭載されたオーブンを作っている。オーブンの中をよく見ると、上部にカメラがあり、中に入れられた食材を一瞬で認識し、食材に合わせた調理時間、加熱温度を実現する。調理時間中は、中のカメラで食材の様子を確認でき、調理後は焼き具合を評価することもできる。

June Oven
ミニマルで美しいデザイン
June's camera
内部にカメラが搭載されている
June’s App
スマホでオーブンの中の様子も確認できる

テクノロジー至上主義への懸念

ここまで様々なハイテクな製品を紹介してきたが、一方でテクノロジー至上主義への懸念も垣間見えた。例えば、Wiredの編集者のJoe Ray氏は、「これまで使われていたアナログのキッチン家電であれば、スイッチ一つ押せば、あとは妻や家族と会話を楽しめていた。しかし、スマホ等と繋がったスマートキッチン家電を使うと、何回もスマホ画面をスワイプして操作する必要がある。また、スイッチを入れた後もひたすらスマホの画面をチェックすることになる。それで、本当に私たちの幸せ度は上がっているのだろうか」と語った。こういった多様な視点に触れられることも、カンファレンスに参加するメリットだろう。デザインやテクノロジーを学んだ身として、改めて、今後考えていかなければならない課題だと感じたものだ。

また、こういったテクノロジー推しのイベントでも、ちゃんと批判的な見方をするゲストも呼び、多方面から議論を深めていく姿勢は素晴らしいと思った。これは、クリティーク(批評)の文化が根付いているアメリカならではのことだろう。


以上で、Smart Kitchen Summit 2019に関する簡単なレポートを終ろう。読者にとって、少しでも新しい発見があれば幸いである。我々編集部は、今後も引き続き様々な展示会に参加していくので、楽しみにしていただければと思う。